とある内科医の読書記録

おすすめの本をネタバレなしで紹介していきます。たまに医学のことも。

『場所(原題:LA PLACE)』アニー・エルノー

2冊目。

2022年ノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーさんの作品を読んだので、土曜日ではありませんが更新してみました。

今回紹介するのは『場所(LA PLACE)』という作品です。ルノードー賞受賞作です。

 

父は労働者階級出身だった。

十二歳で学校を辞めさせられてから、農場で雇われ、その後は工場に勤務、母と結婚してからは小さな町で店をもった。フランス語の綴りもままならず、ずっと知識階級に引け目を感じていた人生だった。一人娘が学校で優秀な成績を収め、特に国語に秀でていることが分かってからも、娘が図書館に行ったり、家で本を読むのを嫌がった。そんな父も、娘がエリート出身の男と結婚して孫が産まれてからは、少しずつ娘が仲間入りを果たした知識階級へのコンプレックスとうまく折り合いをつけていったが――。

フランス人女性として初めてノーベル文学賞を受賞した著者が、自分よりも上の階級に行こうとする娘へのわだかまりを抱える父を見つめる自伝的小説。1984年、ルノードー賞受賞。

 

ノーベル文学賞を受賞した作家さんの作品は、読みづらいものが多い気がします。古い作品が多いからか、訳書だからか、非常に文学的だからか……。ノーベル賞作家の本を読んでみようと思って返り討ちにあったことは一度ではありません。

 

そんな私でも、今回読んだ『場所』は一気に読めました。

訳者が優秀なのかもしれません。読みやすく、おすすめです。

 

フランスの格差が今よりも強かった時代。下層階級として生まれ育った父親の生涯、教養あるブルジョワの仲間入りをして生まれる父親との隔たりが綴られています。

無駄な修飾のない淡々とした文章なのに、引き込まれ、胸打たれます。行間から作者の想いが伝わってくるからですかね。

今の日本では当時のフランスほどの格差(特に学問・教養において)はないと思いますが、それでも生活の格差を感じることはありますし、自分とは違う世界の人達の中に溶け込めない居心地の悪さ、大人になってから親に気を使い自分の成長を隠そうとする姿など、共感できる場面が多々ありました。

 

世界各国で愛されノーベル賞を受賞した理由が、ほんの少しでもわかったような気がします。

 

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